Who is Rafal Blechacz?

ラファウ・ブレハッチの魅力

Rafal Blechacz

仕事柄新しい人に出会う機会が多いが、時間が許せばラファウ・ブレハッチのピアノの話をしている。ブレハッチ専用のウェブサイトを書いているというといつも驚かれ、どうして?と訊かれる。「彼のピアノを聴いていると心が洗われ、幸せな気持ちになるから。」と答えている。

一音一音に魂がこもった深みのある音色。清らかで気品ある音楽。特定のピアニストの音にここまで惹かれたことはかつてなかった。

厳しい仕事がひけたあと、つらい体験をしたあと、生きるのにちょっと疲れたかなと感じた時、彼の音色でふっと泣けてきたり、「いろいろあるけど、でも結構幸せじゃない。」と納得したり。

「あなたの世界のなかには、ノーブルで繊細な、美しく調和にみちた場所があると思えるのです。そのなかで、悲しみ、苦しさ、喜びといった感情が、純粋に昇華されていくような。」(青澤隆明、月刊ショパン09年4月号)とずばり表現してくれる専門家の文章を見るとうれしい。

同じ感動を持つ誰かと気持ちをシェアしたい

最初はなぜこんなに感動するのかわからず、音楽雑誌やCDライナーノーツから一生懸命答えを見つけようとした。同じ感動を持つ誰かと気持ちをシェアしたい、そう思っている人はたくさんいるかもしれない、そんな人たちの気持ちのよりどころになれたらいいな、などと考えてラファウ・ブレハッチ専門のブログを始めたのが2008年の春だった。内容は、ネット上で見つけたラファウ・ブレハッチに関するさまざまな情報(レビューやインタビュー、ニュースなど)。ポーランド語やドイツ語、日本語といった各国語の情報源を共通語の英語に変換してアップするのは、ちょっとした発明だった。各国のファンが歩み寄ってくれて、これまで連絡を取り合ったファンの居住国は、ポーランドはもとより、南北アメリカ、欧州、アジアと、地理的広がりを見せ、情報提供や翻訳で協力してくれるファンもいる。まだ彼の演奏会を直に聴いたことのないファンも多い。彼の音楽の普遍性を感じる。

ラファウ・ブレハッチの音楽の深さ

彼の音楽の深さは、彼のパーソナリティに起因する。信仰深く、幼いころから教会に通い、そこで聞いた賛美歌や聖歌、そしてバッハが音楽への入り口。今も時間が許せば、生家のある教区教会やその他教会のミサでオルガンを弾くという。

Rafal Blechacz

ビドゴシチの教会。
2007年1月6日、公現祭のミサ

「(子供の頃)僕は非常に忍耐強くて、多くの時間を始めて知る音楽の探究に捧げることができました。僕は曲を弾くと本能的にその作品や作曲家の心の中に入ってしまい、僕の感性、理解、感情を通した真実の解釈を見つけようとします。
(ラファウ・ブレハッチ、2007年来日公演パンフレットより)

「音楽は祈り」というインタビューを見つけたとき、これがこの人の本質だ、と思った。
「音楽は純粋な祈りとなりえます。僕が音楽で自己を表現しようと決めたのは、それによって、重要な本質を言葉なしに伝えられるからなのです。
(「カトリックガイド」とのインタビュー、2007年11月)
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ブレハッチは、トルンのニコラウス・コペルニクス大学哲学科の博士課程を聴講している。現象学や音楽の哲学である「美学」に興味を持ち、音楽作品の哲学的解釈学にフォーカスをあて勉強している。それ以前から個人教授を受けてきたヤギエロン大学のストゥルジェフスキ教授は、ブレハッチのアルバム「ショパンピアノ協奏曲」のライナーノーツを執筆している。
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Rafal Blechacz

ハンブルグにて。2009年10月

「ツアーのとき合間に哲学の本を読むのが、僕の勉強法であり、リラックス法でもあります。音楽の哲学、哲学に基づく音楽学に魅かれています・・・」「将来書くであろう論文では、特定の芸術作品の正しい解釈と解釈上許される自由、という問題を扱うかもしれません。」
(ポーランドラジオでのインタビュー、09年8月)
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感謝の気持ちを込めて…

これまで欧州・北米・日本で、何度も彼の演奏会に行く機会に恵まれた。毎回新しい何かを与えてくれる。忘れがたい演奏はいくつかあり、2010年2月の、ワシントンDCのデビューリサイタルもそのひとつ。洗練された聴衆に恵まれ、バッハ、モーツアルト、ドビュッシー、ショパンの全ての曲において、彼が生み出す音を通じての聴き手とのスピリチュアルな交流や、聴き手と演奏者双方の心の高揚を感じた。細い体で全身全霊を込めた、ショパンのスケルツォ1番は、音としても映像としても忘れることができない。

まだ若い演奏家だから、これからの成長が楽しみ、という声をときどき聞く。私はむしろ、今まで聴かせてもらったひとつひとつの曲だけでも十分幸福で、天国に行っておつりがくる位だと思っている。そんな感謝の気持ちを少しこめて、こうしてウェブサイトを書いている。ただ、彼の弾くバッハの曲集だけは、生きているうちに録音が出るといいな、と秘かに待っている。

このウェブサイトについて

今回ウェブサイトをかなりシンプルにリフォームした。新しいファンの方にまず紹介したいのは、彼のピアノの並はずれた美しい音色と、それを可能にする精神的な高み。まずは演奏を触りだけでも聴いていただけるよう、Virtual concert hallというページに、オンライン上で聴くことができる合法的な音源(ドイツ・グラモフォンが提供するプロモ・ビデオ等)を集めた。ラファウ・ブレハッチのパーソナリティに触れていただけるよう、インタビューでの彼の言葉をRafał Blechacz quotesに集めた。興味を持ってくださった方には、日々更新しているブログ記事をご覧いただきたい。懸案だった日本語サイトの再開にもなんとかこぎつけた。様々な専門分野の知見からアドバイスをくださった方々に心からお礼申し上げたい。

Akiko Ichikura

Rafal Blechacz

歴史的瞬間、
恩師ポポヴァ=ズイドロン先生と。
2005年10月22日

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